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露頭に迷ってしまいそうな大学院生が、どこかに書かなければ忘れてしまいそうな大切なことをここに残していきます。

障害は個性なのか

 私は先天性の中高度感音性難聴です。  数少ない幼少期の鮮明な記憶のうちの一つに、聾学校(現在の聴覚特別支援学校)の体験入学の記憶が未だに残っています。テーブルを囲んで、椅子に座って、びわの実を食べたのを覚えています。その実がとてもおいしくて、家に帰ってびわの実がないかよく聞いたことまで覚えています。  私は親の意向で、聾学校の体験入学に参加しましたが、これまた親の意向で近所の小学校へ通うことになりました。今聞くと、完全に聞こえないわけではないから、普通の学校に通わせてあげたかったそうです。  特別支援学校の目的として、「その障害を自覚して社会をどう生き抜くのかを身につける」というものがあります。当然、普通の学校にはそんな目的はありませんから、たくさんの苦労を経験することになります。

 私が中学の頃から頻繁に聞くようになったフレーズである「障害は個性」。一見いい言葉に聞こえますが、実は10年間ほど私はこの言葉に苦しめられていたのです。そして最近ようやく、「障害は欠点」とすることで、気持ちが楽になったのです。一体なぜでしょうか。

 まずこのフレーズの誤りについて指摘していきましょう。  第一に、よくある、「○○は✕✕だ」という決めつけです。障害は△△でしかない訳ではないのです。もちろん、障害は個性と捉えることで楽になる人がいても否定はしません。簡単に障害というと、身体障害者であれば、「大多数の人にあるのに、自分にはない」、そういう状況を指します。  しかし、ほとんどの障害者が抱える悩みというのは、その障害があるかどうかではありません。確かに、障害そのものを恨むことはありますが、その根本原因は障害があるからではありません。その障害によって起こる、二次障害とでもいいましょうか。周りの人とのコミュニケーションや、自分の抱く希望によって引き起こされるものです。このように、障害者が抱える悩みというのは、一見簡単なようで異常なほど複雑なものなのです。特にある一定の出来事を経験するかどうかで悩み方が大きく変化することもあります。  このように、ここまで複雑な悩みを解決できるのは障害者自身のみです。おそらく、同じような障害を持った人に言われても納得できないでしょう。確かに共感のようなものは得られて少しは楽になりますが、根本的な解決は難しいはずです。それほど奥深い悩みなのです。  そんな悩みに対して、簡単に「障害は個性」と言われたところで、解決するはずがないのです。

 第二に、障害は個性ではありません。確かに、「障害は個性」という言葉のインパクトは極めて大きいものです。だからこそ、「障害は個性だ障害は個性だ」と思ってみたら何か変わるんじゃないかと思い込みます。これは一見障害に対して前向きになることに思えますが、実際は違います。なんの根本的な解決にもなっていません。  どうしてかというと、障害は個性だと割り切ることで、自分の自信をなくすからです。自信家の方であればこれ以降の話は無視して構いませんが、そうでない方は少しでもいいから耳を傾けてみてください。当然、個性だと言って割り切ることによって、障害を攻めることがなくなります。本来障害によって引き起こされる困難は、次第に自分の性格を攻めることになります。そうすると、今まで以上にストレスがかかり、悩みは増え続けてしまいます。  ところが、障害を欠点だと割り切ってみるとどうでしょうか。確かに、悩みのタネを大きくしようとしていますが、自尊心はそのまま残り続けます。僕はこれができないから、あれができないから、と考えることができるようになります。そう思うことが障害者にとって、前向きな考え方だと僕は思います。

 できることと、できないこと、できそうなこと、を自覚してみましょう。障害者だからできないことはたくさんあります。僕の場合、雑音の多い場所での聞き取り、グループの話し合い、英語のリスニングテストなどがとても苦手です。さらに、できることと言えば、音が関係ないことです。たとえば、読書や今のようにブログを書くこと、ゲームだって音が関係なければできます。さらに、ここで大事なのはできそうなことを考えることです。ちょっと頑張ったり配慮したりしたらできそうなことです。  何が言いたいのかというと、できる、できないだけでは自尊心が保てないからです。僕が思う、障害者にしか持てないかけがえのないものは、「ここまで苦労して生きてこれたこと」、ただそれだけです。他の人にはわかりません。他の人にわからないからこそ、僕たちは苦労してきたんです。そんなかけがえのないものをこれからも大きくしていくには、少しでも頑張ってみることが大事です。  これをするためには、普段の生活から、自分の障害に向き合い続けることが大事です。個性だと言って気にしないでいてはだめです。普段から自分の障害の上でどうすれば改善できそうか、何について気をつければいいのかについて考え続けていきましょう。

そして、シェアしていきましょう。これがこの記事のスタートです。

ざっくりと話してみましたが、もう一度、障害について悩んでいる人は、一つの意見だけを聞かないようにしてください。自分と同じ障害を持っているだけでなくていいです。どんな解決方法があるのか、日々模索することが大事だと思います。